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アレンジ豊富な「九条ねぎみそ」。広い世代に愛される秘密

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  1. 味噌を作り続けて約59年。直面した危機
  2. 品物は妥協しない。
  3. 「九条ねぎみそ」が誕生したきっかけ

伊根湾を囲むように海にずらりと立ち並ぶ舟屋。まるで海から生えているように見える舟屋は、木船が腐らないように作られた船のガレージと2階に客室や道具倉庫などの二次的な居室があるのが特徴です。

三方を山に囲まれた伊根町は、気候にも恵まれ岩ガキやブリなどの海産物と京野菜と呼ばれる「京みず菜」や「伏見唐辛子」などの栽培が盛んな地域。

今回は京野菜を使った自家製のお味噌を作っている岡田博美さんにインタビューしました。

味噌を作り続けて約59年。直面した危機

約40年前、JA(農業協同組合)では、お味噌汁に溶かして使う味噌を主に作っていましたが、時代の流れとともに味噌を作れなくなるというお話が。

理由は農業協同組合の合併にありました。「農協合併助成法」という農業協同組合の合併を促す法令が1961年に施行され、当時、市町村に1つとは言っていいほどたくさんあった農協組合は年々減少。「受け継がれてきた味噌づくりを残したい」というJAに勤めていた岡田さんのご友人からご紹介を受け、当時勤めていた職場を早期退職を決意。空き家だった岡田さんのご実家を作業場として味噌づくりを開始し、以降19年が経過した今も味噌づくりを続けています。

品物は妥協しない。

伊根町では、イノシシやニホンザル、シカなどの野生鳥獣による農作物の被害が多く、水稲、小豆などが育てにくい環境です。お味噌づくりには欠かせない大豆もその被害を受ける一つ。当初使っていた大豆は、品種が混在した大豆などあまり良い品質を使っておらず、納得のいく味が出来なかったそうです。

試行錯誤していた中、「同級生が作っているこの大豆を使ってお味噌を作ってほしい」と向井酒造(伊根町にある酒蔵)の方が持ってきた大豆を使いお味噌を作ってみたところ、「今までの味噌とはまるで違って、とても美味しかったの。」と岡田さん。今の味噌の味わいにたどり着きました。

美味しさの秘訣は、丁寧な工程にもありました。大豆をきれいに洗い、きちんと灰汁を取る。「良い大豆」と「丁寧な作業」が美味しいお味噌を作る秘訣だと教えてくれました。「何も特別なことはしていません。基本が大事。この基礎を後継者の方にも大切に受け継いでいきたいですね。」

「九条ねぎみそ」が誕生したきっかけ

市場に野菜が流通できる規格検査は厳しく定められています。例えば九条ネギだと緑の葉っぱ部分が規格より数センチ伸びているだけでも規格外となり、当時はよく田んぼに放棄されていたそうです。「もったいないな、何か使えないかな」と考えていた時に、規格外の九条ネギを持ち帰り、刻んで自家製お味噌に入れてみたところ、家族から大好評!こうして「九条ねぎみそ」は約15年前に誕生しました。

その後、九条ネギを栽培している農家さんとタッグを組み、1年を通じて美味しい「九条ねぎみそ」をつくれるようにもなり、多くのお客様や伊根町の小学校や中学校へお届けしてきました。

岡田さんの作業場から徒歩で約3分の本庄小学校では、毎年5、6年生が岡田さんの指導の下でお味噌を作る体験学習を行っています。「体験学習に来てくれた時は、小学生が味噌の詩を作ってくれたの。」と嬉しそうに語る岡田さん。未来ある子供たちに味噌の魅力を伝えることができる喜びを語ってくれました。

岡田さんのもとには大阪からわざわざ2時間以上もかけ自宅用にお味噌を買いにくるお客様も。地元から県外、広い年代に愛される魅力たっぷりのお味噌は、ほのかにやさしい甘みのある味噌の中に九条ネギのシャキシャキが楽しい一品です。一度蓋を開けたら、どんどんご飯がすすむ「九条ねぎみそ」はラーメンや野菜炒めなどに少し入れて味の変化を楽しむのもおススメ。時間がない時にはサッとお湯を注ぐだけで簡単なお味噌汁にもなります。

来年2024年の味噌づくりを最後に、現役を引退する予定の岡田さん。岡田さんと後継者の方がともに作る今しか味わえない魅力たっぷりの「九条ねぎみそ」を是非味わってみてはいかがでしょうか。

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