島根
ぷるん、サクッ、ふわり。島根から届ける寒天菓子の新たな魅力「いづも寒天工房」

今から100年以上前、大正元年(1912年)に創業した「津山屋製菓」は、神々が集まる地として有名な島根県・出雲市で寒天菓子を作り続ける老舗の菓子メーカーです。そんな津山屋製菓から誕生した新しいブランド「いづも寒天工房」のお菓子が、味もおいしくて見た目もかわいいと話題になっています。
“寒天菓子はおいしい”をもっと広めたい!

津山屋製菓は、もともと饅頭や桜餅、羊羹といった伝統的な和菓子を手掛けていました。寒天ゼリーは、昭和59年(1984年)から製造を開始。平成16年(2004年)に現代表の川田康二さんが事業を引き継いだ後、ライバルが多い昔ながらの和菓子業界の中で、何か他との差別化ができないかと、寒天ゼリーに注力してきて今に至ります。
2015年に津山屋製菓から誕生した「いづも寒天工房」は、普段あまり寒天菓子になじみがない方、特に若い世代の方にも寒天菓子を楽しんでもらいたいとの想いから立ち上げたブランドです。


直営店の「いづも寒天工房 出雲大社参道本店」は、出雲大社から歩いて4~5分の参道脇、出雲大社前駅のすぐそばにあります。
店内では、島根県産の食材を使ったスイーツや、地元の珈琲店とコラボしたオリジナルブレンドコーヒーを提供するなど、お菓子に加えて、島根・出雲の魅力を発信する拠点にもなっています。
カラフルな見た目と不思議な食感が楽しい『雪ふわり』

「人気No.1の『雪ふわり』は、淡雪(あわゆき)をアレンジしたお菓子なんですよ」と教えてくれたのは、いづも寒天工房の店長の山本さん。
淡雪は、寒天を溶かして砂糖を加えたものに、泡立てたメレンゲを混ぜ合わせて固めた和菓子。ふわふわした口当たりが特徴で、マシュマロよりもすっと溶ける感覚が楽しめるお菓子です。
この昔ながらの淡雪を、若い方にももっと手軽に食べてもらえるようにと、小粒のゼリーを入れてかわいく作られたのが『雪ふわり』。見た目が華やかで思わず手に取りたくなるお菓子ですが、商品開発にあたっては相当な苦労があったと言います。

「淡雪にゼリーを入れるアイデアは良かったんですが、困ったのはそれぞれの重さがまったく違うところ。メレンゲは軽いんですけど、ゼリーは重たい。普通にメレンゲの中にゼリーを投下すると、どんどんゼリーが下に沈んでいってしまうんです。」
「それと、一粒の中にゼリーがちゃんと入るようにすることも難しくて、カットした淡雪の中にゼリーが入っていないものがたくさんできてしまったんです。
ゼリーが沈まず、かつ一粒の中にゼリーがちゃんと入るようにするのが本当に大変で、試行錯誤の連続だったと現場の職人から聞いています。」


そんな苦労の末にようやく誕生した『雪ふわり』は、開店当初から販売しているロングセラー商品。発売当時の8個入は、4つの味がそれぞれ2個ずつ入ったものでした。
「8個入なのに4つの味だとおもしろさがないねと、8つの味にすることになったんです。追加する4つの味は何がいいのか、どういった味なら手に取ってもらえるのか、それを考えるのもとても難しかったようです。」と山本さん。
最終的には「珈琲」「巨峰」「甘夏」「いちご」「あかりんご」「みかん」「メロン」「ラムネ」に決まり、一粒一粒すべてが違う味に。8個入は特に彩りもきれいで、どの味から食べるか迷ってしまうような、特別な一箱に仕上がっています。
「いづも寒天工房」のお菓子は個性派ぞろい

ギフトにぴったりなお菓子『縁結びかん』
いづも寒天工房の2番人気商品『縁結びかん』は、ペクチンゼリーのお菓子。寒天とは違い、果物に含まれているペクチンを利用して固めているため、果汁が多く使用されています。
フルーティーでジューシー感があり、グミほど固くなく、寒天ゼリーほど柔らかすぎず、もちっとした弾力のある食感が特徴。
「あまおう苺とあかりんご」、「巨峰と瀬戸内レモン」の2つの味の組み合わせがあり、特にあまおう苺とあかりんごの味が入った『紅白縁結びかん』は、その色合いが縁起が良いと、引き出物や贈答品としても人気です。
「ゼリーの形は、出雲の縁結びにちなんで水引の形になっています。この形にするのは機械では難しく、職人が一つひとつ手作業で結んでいるんですよ。」
いづも寒天工房のお菓子は、その繊細さゆえに、ほとんどが職人の手仕事によって仕上げられています。「1回で作れる数が決まっていて、大量生産はできないんです。」と話してくれました。

ただいま人気急上昇中のお菓子『琥珀(こはく)』
琥珀糖(こはくとう)は、寒天と砂糖を煮詰めて冷やした後、その寒天ゼリーを切って一粒ずつ乾燥させた伝統的な和菓子。
錦玉羹(きんぎょくかん)などとも呼ばれ、昔ながらの琥珀糖は、見た目の色こそ異なれど、食べたときの味は同じというのが一般的です。
いづも寒天工房の『琥珀』が他と違うのは、リキュールや果汁を使って、色も違う、味も違う、果汁感のある琥珀糖を作り出したこと。
また、食感にもかなりこだわりがあり、水あめを入れることでなめらかな食感を生み出しています。上品な食感である“しゃりっぷるっ”の状態を長持ちさせるための工夫も行っていると、山本さんは語ります。
「琥珀糖は、外側から徐々に砂糖が結晶化していって、白っぽい膜が張ってきます。そのまま置いておくと、やがて砂糖の塊になり、ガリガリした食感になります。
当店の琥珀は、まるで薄氷のような薄い膜の状態のときの、外のしゃりしゃりした食感と、中のぷるんとした寒天の食感を楽しんでもらいたいんです。」
「そのためにパッケージを変更して、おいしさを長持ちできるようにしました。琥珀の種類によっても変わってきますが、長いものですと製造後60日はおいしく食べていただけます。」

島根県産品を使ったお菓子『ふるじゅれ 島根のめぐみ』
『ふるじゅれ 島根のめぐみ』は、「多伎町産の蓬莱柿いちじく」「島根県産のブルーベリー」「斐川町産の出雲生姜」「松江市にある<お茶の三幸園>の抹茶」の4つの味が楽しめるフルーツジュレ。もっちりぷるんとした食感で、素材の風味が口いっぱいに広がります。
いづも寒天工房を立ち上げるきっかけとなったもう一つの理由が、この商品にありました。
「実は以前から、地元の農家さんや関係者の皆さんから、島根県産の農産物や特産品を使ったお菓子を作って欲しいという要望をいただいていたんです。
ただ、島根県産の材料は高品質なんですが、生産量が少なかったり供給量が安定しなかったりするので、全国販売している津山屋製菓の商品に使うのは難しい。
でも、出雲大社に来るお客様に向けた地域の名産品としてなら、島根の素材を活かしたお菓子が作れる!と売り出すことになりました。」
今では島根を代表するお土産の一つになっています。
食感が決め手! 寒天菓子の新たな可能性を求めて


寒天は海藻を原料とする植物性の食品素材。低カロリーで、食物繊維を豊富に含んでいるヘルシーな食材です。そんな寒天から作られる寒天菓子は、いろいろな食感が楽しめることが大きな魅力になっています。
「“この食感が好き!”というお客様の声をいただくと、すごく嬉しいんです!」と山本さんは言います。
「味はもちろん大事なんですが、例えば、ぷるんとした葛餅のようなものや、砂糖をまぶしたサクッとしたもの、『雪ふわり』のようなふんわりとした口どけの良いものなど、食感のバリエーションを作り出せるのが、寒天のおもしろさの一つです。」
「味もおいしくて、見た目もかわいくて、食感も楽しい。「きれー!」「わぁー!」と驚いてもらえるお菓子、いづも寒天工房にしか作れないものをこれからも発信していきたいと思ってます。」
どこまでもオリジナルにこだわり、新しい寒天菓子を生み出し続ける「いづも寒天工房」。これからどんなお菓子が誕生するのか、今後の展開が楽しみです。