宮城
シーンにあわせた焙煎珈琲とスコーン&スパイスカレー!宮城「HONOKA COFFEE」

2002年、宮城県仙台市に自家焙煎珈琲豆工房「ほの香」がオープン。創業者である高橋郁子さんは東北初の女性焙煎士。その跡を継いだのは息子の高橋周平さん。親子2代の喫茶店にはそれぞれの物語がありました。
自分の好きなことを仕事に。第二の人生のはじまり

自家焙煎珈琲豆工房「ほの香」は、当時まだ珍しかったスペシャルティーコーヒーに特化して、高品質な生豆を仕入れて焙煎し、地元の飲食店や一般のお客様に販売するところからスタート。その傍らにあるスペースで、来店されたお客様にコーヒーを振る舞うスタイルで営業が始まりました。お店の跡を継いだ息子の高橋周平さんは創業時の経緯についてこう語ります。
「母はもともと会社員として働いていました。あるとき、社内で早期退職者募集の機会があって、それに応募することにしたそうです。第二の人生を歩むにあたり、”自分の好きなことは何だろう?”とあらためて考えたとき、時代的に喫茶店文化に親しんできたからか、自分でも喫茶店をやりたいと思ったそうなんです。」
「その頃に、本屋で自家焙煎の本と出会い、本の著者に直接電話をかけ、事情を話して弟子入りをお願いしたと聞いています。ただ、その著者のお店が遠方の県外にあったため、家から通える珈琲店を紹介してもらって、そこで修業を積むことになりました。そして2002年、晴れて仙台で喫茶店「ほの香」をオープンしました。」

いつでも手軽に飲めておいしい。それが「ほの香」コーヒーのこだわり

コーヒーへの2つのこだわり
酸味の少ない深煎りのコーヒーを中心に、中煎り、浅煎りまで、幅広いコーヒーメニューを取り揃える「ほの香」。たくさんの人にコーヒーを楽しんでもらえるよう、特に2つの点にこだわって作っていると周平さんは言います。
「ほの香のコーヒーはスペシャルティーコーヒーなので、生豆は高品質なものを仕入れています。ただ、高級な豆は味や香りが独特で、毎日飲むには飲み疲れしやすいので、高品質ではあるけれど高価すぎないもの、味が尖りすぎていなくて口なじみが良いもの、“みんなが知っているコーヒーのちょっとおいしいやつ”をテーマに豆を選んでいます。」
「それから、季節感や利用シーンも大切にしていて、例えば、朝一杯目のコーヒーはこうであって欲しい、雪を眺めながら飲むコーヒーは深入りでこういう味がいいといったように、コーヒーを飲むシチュエーションをイメージしながらブレンドを考えています。」
また、ほの香で使用している焙煎機は、ドイツ産の半熱風式と国産の直火式の2種類。コーヒーのブレンドメニューに応じて使い分けされています。



誰が淹れてもおいしいコーヒーを
難しい説明なしに、誰でもおいしく淹れられるように工夫して作られている「ほの香」のコーヒー。1番人気の『ほの香ブレンド』は、少しの酸味と甘さがあり、バランスが良く、すっきりしていてお代わりしたくなるおいしさ。2番人気の『香りの回廊』は、酸味がない深煎りコーヒー。3番人気の『マンデリン』は、ハーブ・スパイス感のある深い香りと、しっかりした甘みが感じられるコーヒーです。

コーヒーをおいしく淹れるコツ
「コーヒーの粉の量が12gであれば、お湯の量は200㏄くらいがちょうど良い濃さになります。お湯を3回にわけて注ぎますが、初回時に30~40秒くらい蒸らすのがポイントです。蒸らしをしっかり行うと香りがぐっと良くなります。
ミルクを入れてカフェオレを作るときは、お湯の量を約半分の100㏄にしてコーヒーを淹れ、レンジなどで温めたミルクを同量の100㏄加えます。」
夏にぴったり!アイスコーヒーソーダ
「ソーダ割りをする場合は、エチオピアのコーヒーがおすすめですね。作り方はカフェオレと同じく約半分のお湯100㏄を用意してコーヒーを淹れ、冷めたら炭酸水やトニックウォーターを同量の100㏄注ぎ、氷を入れます。爽やかでさっぱりした味わいです。」
スコーンもスパイスカレーも、コーヒーに負けない本格派
息子の周平さんがお店を手伝い始めたのは、開業から7年後の2009年のこと。そこからスイーツや食事のメニューも徐々に増やしてきました。今ではリピーターが継続する人気メニューも誕生しています。
ひと月に3万個も売れる看板商品「スコーン」
自家製スコーンに使用する小麦や卵は、近隣の農家さんから直接仕入れるこだわりぶり。このスコーンは周平さんの子どもの頃の思い出にルーツがありました。
「母が友人から本場イギリスのレシピを教えてもらって作っていたもので、子供の頃に時折おやつとして食べていました。実は母の時代から不定期に提供していたのですが、お店を手伝うことになったとき、自分の思い出の味を皆さんにも召し上がっていただきたいと思ってレギュラーメニューにしました。」

もう一つの人気メニュー「スパイスカレー」
カレーも以前からあったものの、数年前のある日、週3日はカレーを食べるというスタッフとの会話がきっかけで本格的なスパイスカレーを作ることに。
「コーヒーの仕事は香りを扱う仕事だと考えてまして、香りの強弱や微妙な変化を感じ取る感覚は、カレーのスパイス選びにも通じるところがあると思っています。この豆とこの豆を組み合わせると、こういう香りや味になると考えるプロセスと、このスパイスとこのスパイスを組み合わせると、こういう香りや味やなるという発想が似ているなと感じてます。」


HONOKA COFFEEのコンセプトは「暮らしの中に”旅”をツクる」

2023年にHONOKA COFFEE 仙台駅店をオープンする際、ブランドロゴを変更。「暮らしの中に”旅”をツクる」という企業理念を落とし込んでリニューアルされた新しいロゴは、周平さんが自らデザインしたもの。ロゴマークに旅を連想させる旅行鞄を採用し、真ん中のベルトを「ほの香」の「H」の形に。遠くからでも近くからでもひと目でわかるデザインに仕上げたと語ってくれました。



「企業理念の「暮らしの中に”旅”をツクる」というテーマは創業時からのものではなく、私自身の経験を通じて生まれたものです。母が第二の人生の生きがいとして大切にしていたのは、ほの香へ来てくださった方への心からのおもてなしでした。「ほの香」の名前は、「珈琲のほのかな優しい香りに包まれて穏やかな気持ちになれるように」という母の思いから付けられています。」
「ただ私の場合は、日々繰り返される仕事の中でも「わくわくする瞬間」を見出したいと思ってまして、何が自分にわくわく感を与えるのかずっと考えていたんです。そして、それが「旅」だと気づきました。
旅の魅力について考えたとき、思い浮かんだのは「余白の時間」です。旅に出て自分らしさを取り戻す、その余白の時間こそが旅の最大の魅力ではないかと。日々の忙しさの中でも、コーヒーを飲みながらその「余白の時間」を感じてもらいたい。自分の人生をしっかりと感じてもらえる場所を提供したい。そう思ってリブランディングしました。」

ドリップバッグコーヒーを忍ばせておけば、いつでもどこでも豊かな気持ちになれます。自宅はもちろんのこと、職場や旅行先、人生の旅のお供に、コーヒーはいかがでしょうか。